山本穣司「累犯障害者」再論—振り込め詐欺天国の日本

 同書を読んでいると、あのように他愛ないほど簡単にひっかってしまう振り込め詐欺の被害者は高齢者のみならず軽度の知的障害者もそうではないのかという疑いがおのずと湧いてくる。さらには金の引き出し役にもそのような人々が重宝されているのではないだろうか。
 こう考えると、コミュニティが崩壊し、マーケットメカニズムを是とする考え方が広がれば広がるほど、放っておけばこれらの人々は悪党に利用されつくすか、自爆するか、路上で乞食になるかしかない存在であり、換言すれば、市場主義、新自由主義の広がりは、必然的にこれら人々の犠牲を生み出してしまうということだ。
 反市場主義—とまで言うと極端ならば、市場主義を推し進める際にその行く末をもっとも気にかけなければならない層の人々だということになろう。

累犯障害者 (新潮文庫)

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