2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

【イスラム原理主義」という用語の学問的敗北

マフムード・マムダーニ「アメリカン・ジハード」(書評はのちほど)を読んで以来、「イスラム原理主義とは何か」ということがずっと心にひっかかっている。 20年ほど前、トルコ・シリア・イラン・パキスタン・インドのムスリム居住地区・フィリピンのミンダ…

「アメリカは正気を取り戻せるか」と「アメリカン・ジハード」が指し示すもの

「アメリカは正気を取り戻せるか」(ロバート・B・ライシュ、東洋経済新報社)の感想から連想したことなどを。 さて、以下、「ラドコン(Radcon)」というのは「ラディカル・コンサバティブ(radical conservatives)」の略称で、よく言われるネオコンとほぼ同…

お坊ちゃまに庶民の願いは察知できない

あるベテラン個人タクシーが「最近はお客さんに声もかけられなくなった。下手をすると絡まれる」「事業者の笑顔がない。昔は個人タクシーでよかったと想えるときがあった」と話していた。 そう、たしかに世は殺伐としている。理由はそう複雑なものではない。…

山本穣司「累犯障害者」再論—振り込め詐欺天国の日本

同書を読んでいると、あのように他愛ないほど簡単にひっかってしまう振り込め詐欺の被害者は高齢者のみならず軽度の知的障害者もそうではないのかという疑いがおのずと湧いてくる。さらには金の引き出し役にもそのような人々が重宝されているのではないだろ…

「日本国の正体」と清水潔「遺言」

長谷川幸洋の『日本国の正体』は、長く官僚の代弁者のような役割を演じてきた記者が、今頃になって官僚は記者をエージェントに仕立て、意のままに扱うようなことを言っても「何をいまさらカマトトぶって」としらけざるを得ないし、そのような批判であればア…

社会を見る目を根底からくつがえす山本穣司「累犯障害者」

山本穣司の「累犯障害者」を読むと、重度ではない障害者が福祉の範ちゅうに入ることができず、どこからもサポートされることなく犯罪を犯し、障害者年金を組織的に巻き上げられ、聾唖者がより弱い聾唖者から搾取し、出所しても、犯罪を犯したせいで親族縁者…

構造改革をめぐる見取り図

ここで自らの覚書のために大きい見取り図を記しておく。 官僚の天下り、特殊法人の増大、地方への補正予算のばら撒き、業界と行政がグルになった業界保護政策などなどを垣間見ていると、構造改革、規制改革の手は緩めてはならないと考えるが、かといってあら…

優れた経済学者の冷静な指摘

竹森俊平は「1997年」において、住専問題で農林系金融機関が、自分たちに税金が投入されたら責任問題になるとして交渉の席に着かず、公的資金を投入しても経営責任を追わなかった事、それがのちの不良債権問題処理において公的資金投入に国民が忌避感を…

巨悪と闘う正統ジャーナリズム

西岡研介「マングローブ(講談社)」は危険を冒して巨悪と闘う正統的なジャーナリズムの結晶だろう。 あらためて感じるのは旅客運送産業は「乗客」「安全」を人質にとることができる産業だということだ。だからこそ、革マル派はあのようにJR首脳部を翻弄し、…

「日本国の正体」(長谷川幸洋 講談社)感想

「日本国の正体」(長谷川幸洋 講談社)感想 「専務理事政策」「『自分は表面に出ない。あくまで舞台裏で物事を動かす』というのが『できる官僚』の鉄則である」など官僚の生態について興味深い指摘が多数書かれている。これらは実践的に役立つ情報だ。また…

「増補 民営化という虚妄」(東谷暁 ちくま文庫)の虚妄ぶり

規制改革、規制緩和の妥当性を説く著作を意識して読んだきたたので、逆の考えから書かれた書物も読む必要があると考えたが、これは耐え難いものがある。 著者は民営化を徹底的に批判しており、規制改革もボロカスにくさしている。私は規制改革のマイナス面、…

本山美彦と「1997年—世界を変えた金融危機」の竹森俊平

本山美彦の一連の書物は、ガンジーの言う「弱者の立場に立つ」あるいは「強者がつくる歴史に耐えて現場の歴史を書く」という立場から、正確かどうか不明なウェブからも広く引用がなされている。そこに描き出されるのは戦争や金融の世界における米国のまがま…

山地悠紀夫「私は生まれてくるべきではなかった」

「死刑でいいです」池谷孝司著・共同通信社 「累犯障害者」の読後もそうだが、刑務所の入る人達の中に障害者が少なからずいるのだということを意識しなかったのは迂闊だった。 死刑を宣告され、本人が早期を希望したからか分からないが09年7月に処刑され…