「日本国の正体」(長谷川幸洋 講談社)感想

「日本国の正体」(長谷川幸洋 講談社)感想

 「専務理事政策」「『自分は表面に出ない。あくまで舞台裏で物事を動かす』というのが『できる官僚』の鉄則である」など官僚の生態について興味深い指摘が多数書かれている。これらは実践的に役立つ情報だ。また上記の書物同様、国民の目の届かないのをいいことに、役所が利権を拡大しようとしていることも事実だろう。
 が、同書の核心と思われる官僚と記者の関係についてはいまさら何を言っているのかという気にとらわれた。官僚が記者について「こいつは、おれの役に立つかな」と思い、記者は「紙の取れる記者」になるために官僚の代理人化することを批判し、新聞は官僚とは「『別の選択肢』の可能性を示す必要がある」と書く。
 しかし、役所といわず、あらゆる組織が記者の「代理人化」をねらっているのは当然ではないだろうか。そんなことがこの聡明な人物にして長く分からなかったとはとても思えない。つまりカマトトとしか思えないのだ。 別の選択肢などとも書いているが、そんなこと日刊で競争する新聞社にはとてもやる時間的余裕(能力も、か)がないからこそ、官僚の誘導する通りにかいているというのが実態ではないか。できっこないことをいくら言っても何も言っていないのと同じだ。