次に核汚染されるのはロンドン、ニューヨークかもしれない—原発?いや、「ダーティボム」の炸裂で

 今日ツイッターで連続投稿した内容を整理して書いておこう。
 パキスタンのことだ。
 朝日新聞9/10付に掲載されたノーム・チョムスキーのエッセイ「9.11後の戦争 パキスタンの怒りに危機感」において、パキスタン研究の代表的な専門家アナトール・リーベン氏の文章が引用されている。それは次の来るべき破局を暗示している。

 「・・・アフガニスタンの戦争はパキスタンを揺るがし、過激にし、米国、そして世界にとっての地政学的な惨事を招く危険を冒している。・・・パキスタン人は社会のあらゆるレベルで、アフガニスタンタリバーンに驚くほど共鳴している。パキスタンの軍事指導者たちもこうした感情を共有する。・・・軍部は安定した組織であり、国を団結させている。・・・米国の行動は軍の一部の反抗を招く可能性があり、その場合、パキスタン国家はまたたく間に崩壊し、これに伴ってあらゆる災難が発生するだろう。・・・起こり得る災難を著しく悪化させるのは、パキスタンの大規模で急速に拡大しつつある核兵器保有量や、同国におけるジハード戦士の活発な活動だ。・・・背後に潜んでいる災難は、これら二つが組み合わさり、核分裂性物質がジハード戦士の手に流れるかもしれないことだ。・・・そして、核兵器、それもおそらくは核汚染を引き起こす『ダーティボム(汚れた爆弾)』が、ロンドンやニューヨークで爆発するのを目にすることになるかもしれない」。

 気になるのは、パキスタンがインドとのカシミール戦争、同胞であるパシュトゥーン人タリバン」と米国の戦争、インドとの核ミサイル開発競争・・・と、延々と戦争を続けている戦時国家であるということだ。
 10年ほど前にカラチに行ったことがある。その日は何かの記念日だったらしく、テレビでは延々と戦死者、武勲者への称揚番組が流れていた。私はこの時、「ヤスクニ」という言葉を連想した。
 外に出ると公園で男たちが大勢集まり、ハリボテのミサイルを背負って大騒ぎしていた。パキスタン人の友人の家に行くと親戚の赤ん坊がいて、友人は「この子の名前は『オサマ」というんだ」と言ってニヤニヤしていたっけ。友人は温厚なインテリで、好戦的というにはほど遠い人物なのである。
 インドからの圧迫、上向くことのない経済、軍部中心の国家運営、インドからの独立という、国の成り立ちからして、イスラムアイデンティティにしがみつかざるを得ない現実、同胞の国というべきアフガニスタンに対する米国始め先進諸国の蹂躙、それによるパキスタンの疲弊、治安の恐るべき悪化、テロの頻発・・・。
 滞在したことがあるだけに、チョムスキーの危機感は決して大げさではないと感じる。テロの頻発をまったく抑えることができていないということは、文民統制は何ら機能しておらず、軍政に依存せざるを得ない状況にあることを意味する。 
 パキスタンは言うまでもなく核保有国である。チョムスキー(正確にはアナトール・リーベン氏)が描いて見せた、パキスタン核分裂物質がジハード戦士に渡り、ロンドンやニューヨークで炸裂するという地獄図は、フクイチで核の平和利用が不可能であることを証明してしまった今、次に迎えるかもしれないおぞましい未来図として、息の詰まるようなリアリティを持って迫ってくるように私には思える。
 核が「平和利用」であれ、「兵器として」であれ、「欲」と「好戦性」を制御できない人類には使いこなせない代物であることがもはや疑い得なくなったということなのだろう。
 ご参考:以下はアルカイダタリバンが出現する前に、アメリカが何をやったかということが分かる、目まいのするような本。

非聖戦―CIAに育てられた反ソ連ゲリラはいかにしてアメリカに牙をむいたか

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