「構造改革論の誤解」( 野口旭+田中秀臣、東洋経済新報社)

構造改革論の誤解」( 野口旭+田中秀臣東洋経済新報社

 規制緩和という問題を考えるにあたってはきわめて重要な書物だ。

(以下、同書から抜粋)

 「バブル崩壊後の日本経済には、さまざまな構造問題の存在が指摘されてきたが、その多くは、じつは本来の意味の構造問題ではなく、「不況の永続化によって生じた構造問題」
という性質を色濃く持っているからである。つまりそれらは、通常であれば景気循環の上昇局面において解決されるはずの問題であったが、不適切なマクロ政策によって不況が一向に解消されなかったことで、「構造化」されてしまったのである。そうした『構造化された循環的問題』の具体例には、政府の財政悪化、産業構造の調整不良、不良債権、企業の『過剰雇用』などがある。これらはすべて、本来的には『循環的」な現象であり、景気回復のなかで自然に解消されていくという性質のものである。しかし、マクロ経済の長期停滞が続いた90年代の日本経済においては、そうした『自然治癒』の力はなかなか働かなかった。その結果、それらの問題は、日本経済のなかに根深く『構造化』されることになった。それらはあたかも本来の構造問題であり、『構造改革』の対象であるかのようにみなされている。
 しかし、それを政府の過剰規制のような他の構造要因と同一視しして対処するのは、方法論的にまったく誤っている。というのは、それらは本質的には循環的な問題である以上、その根本的な解決のためには、マクロ経済の改善が何よりも必要だからである。

構造改革論の誤解

構造改革論の誤解