一本の美しい花

 ベトナム戦争に医師として志願し、激戦地で戦死したベトナム人女性ダン・トゥイー・チャムの「トゥイーの日記」は、歴史ものや戦記では味わえない「闘いの中の崇高さ」を感じることができる。

 この南の地では、戦功の花も英雄の花も美しく咲き誇っている。しかし、その花は、無数の人たちの血と肉と、犠牲になった青春が培ったものだ。私はそんな南ベトナムという花畑の中を、敬意と誇りとを持って歩いている。そしてその花が散ったときには、心から哀悼の念を捧げている。
 昔も今も私は花が好きだけれど、今はその多様な美しさをより深く理解できるようになった。花へ注ぐ愛情には、ベトナム民族の精神、憎しみ、誇りが溶け込んでいるに違いない。
 私も一本の美しい花になれるかな、トゥアン?

 読むたびに鳥肌が立つ。彼女は1970年に、弟のように可愛がったこのトゥアンは1971年に戦死した。

トゥイーの日記

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