2010-01-01から1年間の記事一覧

なるほどその通りかもしれないけれどもー「はだかの王様」の経済学(東洋経済新報社)

書名から内容を想像するのは難しかったが、つまりマルクス主義の疎外論について語った書物だった。 著者は、王様が裸であることに気づいていながら、そのことを指摘しない(できない)で「裸」状態が延々と続くという「疎外」の状態を示し、「裸の王様」であ…

「文明の衝突」の論理を回避するために(前回の文章の補足)

前回書いた文章(「他者」に寄り添う栄光と懸念−「イスラムの怒り」)の最後の方の論旨が今ひとつ不明確なので補足しておこう。 特に石油の利権問題が要因となっている米国の世界戦略に対して中東諸国は時には懐柔されたり屈服させられたりしながらも、粘り…

「他者」に寄り添う栄光と懸念−「イスラムの怒り」

またも「極東ブログ」の書評を読んで購入した書籍から。 本書は冒頭、2006年のサッカー・ドイツワールドカップ大会の決勝戦でジネディーヌ・ジダンがイタリアの選手に頭突きを食らわせて退場になった事件を取り上げている。 あの時、私はジダンが差別的な言…

「リバタリアン宣言」(蔵研也著、朝日新書)−「右」と「左」でなぜか同じ見解。でも内実は・・・

【追記】中島徹「財産権の領分」を読み、リバタリアニズムが持つ非人間性−弱者がリバタリアンとして生き、犠牲にならざるを得ない残酷ーについてあらためて思うところがあり、下記を書いた時点より批判的であることを付け加えておく。 (本文ここから) 前か…

神の見えざる手—もっと早く知っておけばよかったこと

前の投稿で岩田規久男氏の著作を紹介したので、この際。 多様な考えが存在するということを否定的に言うと、多様な偏見が存在するということであり、それぞれの「偏見」には-絶対的な判断基準はないが-「よい偏見」と「悪い偏見」が存在するということだろう…

よく考えよう―規制改革自体が悪なのか、そのやり方の問題なのか

経済学者・岩田規久男氏の著作には、依然としてこの社会で共有されるようになったとは言い難い、安易な規制緩和批判に対する鋭い反論がつづられている。 たとえば、電力会社の地域独占を排して規制緩和することに大いにブレーキをかけることになってしまった…

本当に「東洋」でいいのかー強引さ感じる寺島実郎「世界を知る力」

本書の注目点はやはり、三井物産戦略研究所所長という財界の一角を占める人物が「日米安保同盟のあり方を根本的に見直し、アメリカと『大人の関係』を構築していくことが重要だ」(154ページ)として、「米軍基地の段階的縮小と地位協定の改定を目指すこと…

覚え書きーだらだら書いてきたこのブログは何を目指しているのか

思うところあって、自分のブログを整理しつつ読み返してみたが、延々と規制改革問題ーそれも効率と公平の問題をめぐって書いている。両者はもともと片方を追求すればもう片方が犠牲になる「トレードオフ」の関係にあるそうなので、私はいつまでも論じ続ける…

あまりに観念論的な・・・的場昭宏「マルクスだったらこう考える」(光文社新書)

的場昭宏氏の「マルクスだったらこう考える」には論理性を欠く記述が少なくない。 たとえば64ページ「マルクス主義の現実的可能性」で 「では、なぜ資本のグローバリゼーションに対抗しなければならないのか。それは、資本のグローバリゼーションこそ私たち…

なんでこんなに違うのかー伊藤元重「危機を超えて すべてがわかる『世界大不況』講義」

経済学を体系的に勉強したことのない人間が経済学者やエコノミストの著作について喋々するというのは考えてみればなかなか大胆な行為なのだろうが、私自身がいつのまにかそれをやってしまっている。高等学校高学年クラスで学ぶ数式が羅列されたら私はついて…